聖なる植物マコモの栽培とマコモ茶の生産

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春から秋にかけて、我が家では家のすぐ横にある湿地帯を利用してマコモ(真菰)という植物を栽培しています。

今回は聖なる植物ともいわれるマコモについて書いてみようと思います。

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テント生活からスタートした移住と同時期に、妻の希望で苗を取り寄せて栽培をはじめました。

若杉ばあちゃんの愛称で知られる野草料理研究家の若杉知子さんがマコモを紹介していて、妻はそれをきっかけに興味を持ったそうです。

私はマコモという植物を知りませんでしたが、実際に栽培をはじめていろいろ調べて見ると、なにやらとても興味深い植物だということがわかってきました。

マコモの歴史

実は日本でのマコモの歴史は古く、稲作が渡来する以前から日本列島に広く自生していたといわれています。

縄文時代の遺跡からマコモの種子が検出されていて、マコモは縄文人の食糧だったという話もあります。

現在はあまり見かけませんが(私が知らないだけかもしれません)河川が現在のようにきれいに整備される以前は、場所によっては河岸などにふつうに自生しているマコモを見ることができたそうです。

マコモと神事

マコモがどうして聖なる植物とよばれるのか。

その理由は、マコモと日本の神社との深い関係にあります。

全国の神社の祭事には必ずといってよいほどマコモの葉が使われています。

マコモがどのような使われ方をするのか、簡単にまとめてみました。

●伊勢神宮

祭事で使われる敷物類には葉薦(はごも)とよばれるマコモの葉で編まれたむしろが使われます。

伊勢神宮にかぎらず、葉薦は全国の神社で使われているそうです。

●出雲大社

ある祭事では宮司が歩く道筋にマコモが敷かれます。

また、本殿注連縄(しめなわ)は稻わらですが、摂社は毎年マコモで新しい注連縄につくりかえるそうです。

これは伊勢のイネ文化に対する、出雲のマコモ文化の名残という話もあります。

●春日大社

宮司が寝床で休む布団の下にマコモの薦(こも)を敷くのがならわし。

薦とはマコモで編んだむしろのこと。

●大分薦神社

薦神社という名前のとおり、内宮の三角池とそこに生えているマコモが御神体。

●宇佐神宮

マコモで作った薦枕(こもまくら)が御神体。

神道では枕に神が宿ると考えられていて、宇佐神宮のほかにも伊勢神宮、春日大社、熊野本宮などの神宝や装束のなかには「神様の枕」があるそうです。

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マコモがなぜこれほどまでに神道との結びつきが深いのか気になるところですが、マコモは日本神話にも登場する植物らしく、それも関係しているのかもしれません。

しかし、マコモが儀式などで使用されるのは神道だけではありません。

日本人にはなじみの深いお盆という風習。

お盆は仏教的な行事ですが、お盆で使われる敷物や飾りにもやはりマコモが使われます。

これは、お釈迦さまがマコモの敷物に病人を寝かせて治療したという言い伝えが関係しているともいわれています。

いずれにしてもマコモは薬用成分を含む植物であることから、清浄な場をつくるという目的でマコモを敷くのは理にかなっていることで、神道や仏教などと関わる以前の大昔から使われていたと考えることもできそうです。

アメリカマコモ

マコモは日本列島だけの植物ではなく、中国をはじめ世界の他の場所にも自生しています。

そのうちのひとつがアメリカ大陸です。

マコモはイネ科の植物なのでお米などのように本来は実がつくはずですが、我が家で栽培しているマコモはいまのところ実がついているのを見たことがありません。

アメリカ大陸に自生する通称アメリカマコモは、日本や中国のマコモとは品種がことなり、食用にできるほどの実がつくそうです。

その実はワイルドライスと呼ばれ、 古くからネイティブアメリカンの食量として重宝されていたそうです。
彼らはワイルドライスを神からの贈り物と考え、収穫に際しては神への感謝の儀式をおこない、伝統的な手法で収穫していたといいます。

私がマコモに最初に興味を持ったのは、ワイルドライスという穀物が収穫できるみたいだ、という話を聞いたからなのですが、先ほども書いたように我が家で栽培している品種ではどうやら実がつかないようです。

アメリカマコモも栽培したいところですが、やはり日本には日本の、アメリカにはアメリカの気候に適応した品種があって、アメリカマコモは日本の気候にはあまり適していないそうで、栽培するのは簡単ではないみたいです。

マコモタケと黒穂菌

そんな実もつかないマコモをどうして栽培しているのか。

その理由はいくつかありますが、ひとつはマコモタケとよばれる食用の野菜が収穫できるからです。

夏の終わりくらいになるとマコモの株元が白くふくらんできて、異様な形になってきます。

これは黒穂菌という菌が寄生することで肥大化した新芽なんだそうですが、この部分が食用になります。

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マコモタケはタケノコに似た食感で自然な甘みがあり、新鮮なものなら生で食べてもおいしいです。

我が家ではロケットストーブでまるごと焼いて、薄皮をむいてそのままよくかじって食べていました。

この野菜は一般的にはあまり知られていませんが、ネットで検索すると収穫時期には通販で販売している農家さんもいるようです。

黒穂菌が寄生しないとマコモタケはできません。

河原などで自生している日本のマコモは、必ずしもすべての株からマコモタケが収穫できるとはかぎらないようです。

うちの場合は、初年度は半分くらいの収穫量でしたが、翌年はほとんどすべての株で収穫できました。

マコモタケを発生させるのに適した品種だったのかもしれません。

マコモタケは収穫適期が短く、時期が遅くなると黒い斑点ができてきてきます。

これは黒穂菌の働きによるもので、次第にこの斑点が増え粉っぽくなってしまい、食用にならなくなってしまうそうです。

しかし、これはこれで利用価値があり、この黒穂菌の粉っぽい胞子はマコモズミとも呼ばれ、これをよく乾燥させて昔は工芸材料として使ったり、油と一緒に練って眉墨にしたりしていたそうです。

マコモのデトックス効果

マコモにはデトックス効果があることで知られています。

マコモタケを食べたり、マコモをお茶にしたマコモ茶を飲んだりすることで自然治癒力が高まり、体の毒素が排出されやすくなるそうです。

「マコモ デトックス」(マツコ・デラックスと間違わないように!)といったキーワードで検索してみると、デトックス効果を体感した人たちの例をたくさん見ることができます。

マコモの粉末をお風呂に入れるマコモ風呂なるものもあって、アトピーなどにも効果があるみたいです。

ちなみに私はマコモタケもたくさん食べましたし、マコモの葉を煎じたマコモ茶もときどき飲みますが、いまのところデトックス効果は体感したことがありません。

市販のものと何か精製方法のようなものが違うのかもしれませんが、個人差もあるのかもしれません。

マコモの栽培

マコモの栽培は水が干上がらない沼地が適しています。

この特性に目をつけて、休耕田などを利用してマコモの栽培をされる農家さんもいらっしゃるようです。

我が家の場合は、小屋を建てて住んでいる土地が耕作放棄された棚田なので、放棄されて数十年が経過していても田んぼの素質をもっていて、水がしみ出してくる沼地が周囲にあります。

はじめはただ水がしみ出してぬかるんでいるだけの場所でしたが、周囲に土を盛って水がたまるようにして、水路をつくり、小屋の脇に田んぼのような一角をつくりました。

はじめの年に5本の苗をこの環境に植えました。

その年は山の動物(イノシシかな?)に何本か倒されたりすることもあり、マコモタケの収穫もも2、3本といったところでした。

翌年、春になると沼地のいろんなところから新しい芽が生えてきて、前年5本だった株がなんと数倍になりました。

その時は翌年にまた新しい芽が出ることも、地下茎で増えていくということも知らなかったので、まさかこんなに増えるとは思ってもみませんでした。

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マコモの栽培といっても手をかけたことははじめに苗を植えたくらいで、あとはほとんどほったらかし。

山から自然にしみ出してくる水を使っているので、水の管理もほとんどしていません。

環境がばっちり合っていたのか、しっかりと根付き、自生しはじめました。

自生すれば手をかける必要がないので、本当に楽です。

マコモには水の浄化作用があるといわれています。

つまり、育った環境の水を浄化するわけですが、これは裏を返せば汚い水で育てばマコモはその水を吸収してしまうということです。

そう考えると、汚染された水を吸収して育ったマコモを口にしたくはありません。

我が家のマコモは山から自然としみ出してきたキレイな水で育っているので、その点は安心です。

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もちろん無農薬、そして無肥料です。

マコモ茶の生産と販売

我が家ではマコモタケの収穫のほかに、マコモの葉を利用してマコモ茶もつくっています。

マコモタケ収穫と同時期に、2mくらいに成長した青々とした葉もカット。

川の水でざっと水洗いしたあと、天日で3日くらい干してカラカラに乾燥させます。

こうして夏の終わりに乾燥させたマコモの葉を1センチくらいにざく切りにし、じっくりと炒ります。

炒ることでとても香ばしくなり、煎じて飲めば味わい深いおいしいお茶になります。

小屋を温めているストーブの上でマコモの葉を炒るのは、冬場のこの時期の仕事です。

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いまはまだいろいろと忙しく時間もとれないので、知り合いにおすそ分けする程度しか生産できませんが、将来的には生産量を増やし販売も視野に入れていきたいと考えています。

その際は、このブログでも販売する予定です。

「無農薬無肥料!綺麗な山水で育ったマコモ茶」

いかがでしょう(笑)

参考文献

今回マコモの記事を書くにあたって参考にさせていただいたのがこの本です。

マコモという植物に興味がある方におすすめです。

菌食の民俗誌―マコモと黒穂菌の利用
中村 重正
八坂書房
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コメント

  1. aoi より:

    縄文時代がマコモ、弥生時代がワラ、出雲と伊勢 おもしろいですね。
    国ゆずりが神話じゃなくなってきますね。

    マコモは日本のスーパーにはなかなか売ってないですね。
    台湾の友人は普通に良く食べてると言ってました。
    タケノコのような食感で中華料理には合いますね、東京のアメ横に行くと生の売ってます。

    • Homare より:

      aoiさん
      中華料理に使われるというのは聞きますね。
      アメ横に売ってるんですか!
      さすが食材の宝庫。
      地方では旬の時期には道の駅でも見かけますね。