山林生活をはじめてから、ずぅ~っとほしかった念願の太陽熱温水器が、ついに我が家で使えるようになりました!
太陽熱温水器は太陽の熱でお湯を作ることができる道具で、よく屋根の上にのっているのを見かけたことがある人もいると思います。
私はこの温水器が前からほしくて、手に入れるチャンスをうかがってきました。
これまで何回か手に入りそうな話はあったものの、なかなか縁がありませんでした。
まずはじめに、私と太陽熱温水器にまつわるこれまでのエピソードを少々。
そんなのどうでもいいわ!という人は読み飛ばしてくださいませ。
【チャンス1】
移住して2年目くらいのころにヤフオクで中古のものを探していたところ、わりと近く(車で40分くらい)で出品している業者がいたので現物確認に行ったことがあります。
価格は2万円でそのまま買って帰ろうかとも思ったのですが、実物は大きくその時私が乗っていた軽バンには乗せることができなかったし、運搬したとしても山の中の我が家まで人力で運び込める自信が当時はなかったので、その時は見送ることにしました。
【チャンス2】
その後勤め先で知り合った便利屋みたいなおじさんに、温水器を探しているという話してみると、知り合いの業者の産廃置き場に時々置いてあることがあるので、今度置いてあったら教えてやると言ってくれました。
数か月後、「この前見たら置いてあったで。いまは雪が積もってて運べんから、雪が解けたらトラックで持ってきてやるわ」とおじさん。
すでに太陽熱温水器をゲットした気になって、その時が来るのを心待ちにしていました。
数週間後、「この前の温水器なくなってたわ。誰かが持って行ったのかもしれん。またそのうち出るから声かけてやるわ」とおじさん。
その後おじさんから話が来ることはありませんでした。
【チャンス3】
その後、不要物回収やリフォームなど他にもいろんな仕事をやっている親方と知り合いになり、またまた温水器の話をしてみました。
「ちょうど今度温水器撤去する現場あるから、それやるわ」と親方。
何というタイミング!よし、今度こそゲットできるぜ!とわくわくしていました。
温水器を撤去するという日の数日後。
「トラックからクレーンで吊って下ろすときにガラスが割れてしもうた。ごめんやけどあれはもうあかんわ。またすぐ出てくるから心配いらんで」と親方。
また今回も縁がありませんでした。
【チャンス4】
ある日、友人の仕事の手伝いに行った日。
「うちに太陽熱温水器が2台あって、1台処分したいんだけどいらない?」と友人。
私の口から温水器の話はまったくしていなかったので、突然降ってわいてきたその話に興奮しながら、「ほしい!」と即答。
後日、友人宅から軽トラに積み込み我が家のある山林へ。
貯水タンクとパネルが分離したタイプのもので、パネルは3枚あって大きくタンクもかなりの重量でしたが、友人と二人で頑張ってなんとか車の入らない山の中に運び込みました。
ところが数か月後、運んできたそのときのまま、まだセッティングもしていない状態で置いてあった集熱パネルに、私がチェンソーで切った木が思いっきり直撃。
集熱パネルはグシャっとゆがみ、強化ガラスは粉々に砕け散ってしまいました。
バリバリに割れたガラスを目の前にして、ただため息しか出ませんでした。
悔やんでも悔やみきれませんでした。
なぜあの時、切った木が絶対当たらない安全な場所にパネルを避難させなかったのか、自分の行いの理解に苦しみます。
お宝が一瞬にして、ただの産業廃棄物になってしまいました。
【チャンス5】
久しぶりに親方(チャンス3と同一人物)とたまたま顔をあわせいろいろ話をしていると、「そういえば、今うちに温水器あるで。なかなか状態も良くてそのまま使えるやつや。ほしいんやったら取りに来たらええで」と親方。
もうこのチャンスは逃すまい!
数週間後、運搬するトラックの段取りもつき、保管場所に引き取りに行きました。
トラックが使えるタイミングもあって日を選べなかったので誰も応援は呼ばず、トラックへの積み込みから運搬、山の中に人力で運び込むまですべてひとりで行いました。
温水器は3つに分解(集熱パネル2枚と貯水タンク)されていたとはいえ、貯水タンクは私の身体よりも大きく、まさかすべてひとりで山の中まで運び込めるとは思っていませんでした。
実際に持ち上げてみたら持ち運べそうな重さだったので、何とか運び込むことができました。
何でもトライしてみるもんですね。
ちょっと前置きが長くなりましたが、こうして我が家に太陽熱温水器がやってきました。
うちのお風呂は野外に薪で沸かす風呂釜と浴槽をただ置いただけの露天風呂。
冬場は近くの温泉に行っていて、暖かくなる4月後半か5月くらいから家のお風呂に入るようになります。
関連記事:テント暮らしのお風呂は薪で沸かす露天風呂
今まさに我が家のお風呂シーズンが到来。
太陽熱温水器を使うにはちょうど良いタイミングです。
架台をつくる
太陽熱温水器を使えるようにするためには、まず傾斜をつけて設置することのできる架台が必要です。
傾斜をつける理由は2つあります。
ひとつは太陽の熱を受けやすい角度にするため。
だいたい30度くらいが適当だといわれています。
もうひとつの理由は、温水器のしくみにあります。
太陽熱温水器は、温かいお湯は上に冷たい水は下に行く性質を利用してお湯をつくります。
貯湯タンクに給水された水は集熱パネルで温められ、タンク内上部に移動します。
タンク内下部の冷たい水が集熱パネルに移動します。
これを繰り返すことでタンク内のお湯の温度が上昇していくのです。
というわけで、まず架台の製作です。
以前切って床下にずっと保管してあった太めの竹がたくさんあったので、とりあえずそれでつくってみることにしました。
6本の竹を使い、竹同士は番線で固定。
さっそく温水器を設置してみました。
温水器全体の大きさは2m×2m30cm。
屋根の上にあるのを見るとあまり大きさがよくわかりませんが、こうして目の前で見るとかなり大きく迫力があります。
給水と出湯の配管は、もともと使われていたパイプが根元付近でカットされていたので、ホームセンターでパイプ同士を連結する部材を買ってきて、ごく一般的な散水ホースをつなげました。
架台に使った竹は床下に保管しているあいだに湿気のせいか劣化していて、200リットルのの容量を満水にした温水器の重さに耐えられるのか強度に不安があったのですが、案の定、給水を開始してしばらくすると、パキッとどこかで竹の割れる音がしました。
いちばん端の竹の真ん中が縦に裂けてしなっていましたが、完全に折れてしまったわけではなく架台の形状は保っていたので、そのまま続行しました。
ひとまず、これですべての準備が整いました。
ところが、2週間ほど経過したある日。
外出から帰ってくると、なんと竹がへし折れ、温水器が傾き、タンクが歪んでいるではないか!
なんということだ!
まさか、今回もまた・・・
この光景を見た瞬間、パネルのガラスが粉々になった過去の苦い記憶がよみがえり、背筋がヒヤッとしました。
幸い、パネルは無傷のようでした。
やはりちょっと無理があったようです。
いったんすべての水を抜いて、タンクとパネルをバラして移動させて、もう一度架台をつくりなおすことにしました。
架台は単管パイプでつくるのがベストだろうという考えが実は最初からあったので、今度は素直に単管パイプを使うことにしました。
竹で作ったときと組み方や形状は同じです。
今度は水平もしっかりと取りました。
ふたたび温水器を設置。
給水を開始しても何の変化もありません。
満水になってもビクともしませんでした。
抜群の安定感!
どこか壊れてしまった箇所がないか心配していましたが、水漏れもなく給水、出湯とも問題なくできました。
太陽熱温水器豆知識
太陽熱温水器は太陽の熱でお湯がつくれるというだけでもすごいですが、タンクの中を開けてみたり、ネットでいろいろ見たりしてその仕組みをよく知ると「考えられてるな~」と感心させられてしまう部分があります。
ひとつは給水が自動で止まる仕組み。
これは特筆すべきことではないかもしれませんが、蛇口を開けっ放しにしていてもタンク内が満水になると自動で給水が止まるのです。
これは水洗トイレのタンクの水が満水になると止まる仕組みと同じで、ボールタップという浮きが浮くことで給水口をふさぐようになっています。
満水時に我が家の温水器のタンクをあけてみると、このボールタップがしっかりと仕事をしていました。
この浮きが割れていたり、何かの原因で浮かなくなっていると満水になっても水が止まらず、オーバーフローの出口から水が出てきてしまいます。
もうひとつは、いつも温かいお湯を取り出せる仕組み。
これは出湯するパイプの先端がタンク内で上下に動くようになっていて、浮きを付けることで常に最上部のもっとも温度の高いお湯を取り出せるようになっているのです。
長府製作所のホームページにあった画像がわかりやすいので、勝手に拝借しました。
画像:長府製作所ホームページより
「なるほどな~」と、ついつぶやいてしまう構造ですね。
こちらも浮きがこわれて浮かなくなっていると、タンク下部のぬるいお湯や水が出てきてしまうというトラブルが発生するようです。
我が家の温水器は温かいお湯が出るので壊れてないと思いますが、念のためタンクの出湯口を開けてこのパイプを引き抜いて確認してみました。
何も異常はなくちゃんと仕事をしてくれているようです。(写真を撮り忘れました)
太陽熱温水器の実力
さて、5月のある日。
天気は雲ひとつない快晴。
夕方5時ごろにお風呂の湯船に給湯を開始。
はじめはホースに残っている水が出てくるので冷たいのですが、まもなくお湯が出はじめました。
数分後、お風呂にたまっているお湯からは湯気が立ち上っているではありませんか!
ホースの先から出てくるお湯をさわってみると、「あつ!」とつい声が出て手を引っ込めてしまうほど熱々のお湯が出ていました。
温度を計ってみると、なんと62℃。
お風呂は45℃もあれば、人によっては熱くて入れません。
62℃なんて水を入れないと、とてもじゃないけど入れる人はいません。
まさかこれほど熱いお湯が出てくるとは思っていませんでした。
うちは山の中にあるので一般的な屋根の上にある温水器と比べて日照時間は短いはずです。
だからそれほど熱々にならないんじゃないかと思っていたのでビックリです!
通常我が家でお風呂を沸かすには、夏場でも1時間、寒い時期だと2時間近くかかります。
しかし、これからは快晴の日なら一本の薪も使わず、熱々のお風呂に入れてしまうんです!
これはすごいぞ!
うす曇りの天気でも、熱々ではないけど一応「お湯」と言えるほどには温かくはなります。
何もしないでお湯が出る
給湯設備が整った現代の一般家庭では、蛇口から簡単にお湯が出てくるのがあたりまえですが、我が家でお湯を使うには、いちいち薪を燃やすなどして必ず火を使って沸かすしか方法がありませんでした。
お湯は使いたいときにいちいち沸かしてつくるものなのです。
ここで生活する私たち家族にとって、お湯というのはそれだけ貴重なのです。
だから、何もしないでお湯が出ることが、本当にうれしくてありがたい。
温水器のお湯を入れたお風呂に入り、空を見上げながらじっくりとお湯の温かさを感じていると、ただ「ありがたい」という言葉しか出てきません。
これまで風呂を沸かさない日は、5月くらいの冷たい川の水でも、はあはあ言いながら私は水浴びすることもありました。
暖かい季節には、嫁や子供は朝にバケツやたらいに水をためて、日中の太陽の熱でぬるくなった水で多少肌寒くても行水をすることもありました。
しかし、お湯が贅沢に使えるようになった今年からは、もうそんなこともしなくなるかもしれません。
最近では、屋根の上の温水器を撤去する家が増えているという話を聞きます。
こんなに優れた設備を撤去して、そのまま廃棄してしまうのは本当にもったいないと思います。
もし水漏れをしていたとしても、構造はシンプルなので大抵の場合はちょっとした部品を交換すれば使えるようになります。
温水器が2台や3台あればそれだけ使えるお湯の量が多くなるので、今後も撤去して廃棄するという話がもしあれば、譲ってもらいたいと思っています。
我が家のお風呂は現在は露天風呂ですが近い将来風呂小屋を作るつもりなので、ゆくゆくは風呂小屋のすぐ近くに太陽熱温水器を移設する予定です。