2017年9月17日。
九州大分に甚大な水害をもたらした後、兵庫県明石市付近に再上陸した台風18号は私が住む岡山にも大量の雨を降らしました。
山林生活をはじめて3年ほどになりますが、これまでにも台風が直撃したり、ゲリラ豪雨のような猛烈な雨が降ったりしたことは何度もあります。
そのたびに川は増水し、勢いよく流れる濁流にはなるものの、これまでどんなに雨が降っても川があふれることはなく、最高水位はだいたい決まっていました。
台風18号が接近してくるその日も、まあいつもくらいの増水だろう、と考えていました。
いつも何かとお世話になっている近くの部落のじいさんが日中にやってきて、一応台風に警戒しておけと忠告しに来てくれました。
この時はまだ大丈夫だろうと、たいして気にもとめていませんでした。
夕方になり、いよいよ本降りになろうかというころ、近くの部落の昼とは別のじいさんがわざわざ傘をさしてやってきました。
このじいさんはいままでに数えるほどしか我が家を訪れたことはなく、ましてや台風などのこうしたタイミングで来たことは一度もありませんでした。
何か用事でもあるのかと思いどうしたのか尋ねてみると、さっき急に我が家のことが気になって、大丈夫だとは思うけど一応声をかけに来たということでした。
この二人のじいさん、特に夕方のめずらしい客が来たことで、今日は何か起こりそうだという予感がしはじめ、雨が本降りになるなか、いつもより警戒心が強まりました。
この日私は仕事が休みで、妻が体調を崩していて朝から寝込んでいたため、前日の残り物で夕食の準備をしていました。
いつもは妻が夕食の準備をしてくれるのですが、この日に限ってキッチンに立っていたのは私でした。
屋外のキッチンからはすぐ目の前を流れる川を見ることができます。
雨が強さを増していくにしたがい、次第に川も増水しはじめました。
雨はどんどん強くなり、やがて家の前の湿地帯の水を逃がすために掘ってある水路が大量の雨水を排出しきれず氾濫。
あふれた水が私が立っている屋外キッチンの足元までじわじわと浸水してきました。
この水路が氾濫したのははじめてだったので、この時点でさらに警戒心が強まってきました。
目の前の谷川に目をやると、すでにいままで見たことがある最高水位くらいまで達していました。
これくらいの雨はいままでも何度も経験したことがあるという印象でしたが、この日は川が増水する勢いがいままでにないくらい早いような気がしていました。
スマホで確認した1時間ごとの天気予報では、雨のピークはまだ数時間先。
谷川がさらに増水することは確実でした。
夕食の準備ができ、家の中に入りました。
娘にご飯を食べさせ、私も食べ始めました。
食事中に娘が眠くなってしまい、食事を途中で切り上げ、妻が寝る布団に娘を連れていき寝かしつけてもらいました。
まもなく私も食べ終わり、もう少しおかわりしようかと思いながらも外の様子が気になったので、おかわりの前に外に出てみました。
玄関のドアを開けて、私は外の様子に唖然としました。
玄関の前にある屋外キッチンは、浸水どころか川のように流れができていて、家の周りの地べたに置いていたいろいろなものが流され始めていました。
長靴を履いて傘をさして周囲の様子を見に行くと、あたり一面水浸しで川になっていました。
少し上流で氾濫した川の水が、畑やティピなど家の周りの生活スペース一帯を流れ出し、家の床下にも流れ込んでいました。
谷川はこれまで一度も見たことがない勢いの激流になり、水の中を大きな石が転がるゴツンゴツンという音が鳴り響いていました。
小屋に戻ると妻が外に出てきました。
私は今見てきた周辺の状況を説明し、「避難しよう」と告げました。
家がどうにかなってしまうということはないと思いましたが、何しろここに住みはじめて以来川が氾濫したのははじめてで、しかも台風のピークがまだ来ていないという状況。
10分後、20分後、さらにこの先どうなるのかまったく見当もつかず、とても安全な状況とは思えなかったので、避難することにしました。
妻が荷造りをしているあいだ、私は車までの山道が通行可能かどうか偵察に行きました。
道路から少し入った田んぼの間の道が、横を流れる川が氾濫して浸水し川のように水が流れていましたが、まだ通行可能でした。
小屋に戻り寝たばかりの娘を抱きかかえ、川のように水の流れる山道を歩いて車までたどり着きました。
車に乗り込むと、ひとまず家族の身の安全が確保できたのでホッとしました。
道路もあちこち浸水していて、道路の横を流れる川が氾濫しているところもあり、大変なことになっているのは私の家のまわりだけではないことがわかりました。
近くの道の駅にでも行って車のなかで一晩を過ごそうかと考えていましたが、妻も体調が悪いのでゆっくり寝たいし、娘もチャイルドシートで一晩寝るのは過酷なので、いっそのこと避難所に行ってみることに。
といっても、避難所がどこなのかいまいちよくわかってなかったので、市役所に電話して開設している避難所を確認しました。
自宅から一番近い避難所に行ってみると、市の担当職員の方が出迎えてくれて、毛布を支給してくれました。
なんと、避難所に来たのは私たち家族だけ。
広いスペースを貸し切りでした。
すっかり目が覚めてしまった娘ははじめての場所に興奮し、階段を何度も上り下りしたり、建物内をいろいろ散策したりしてとても楽しそうだったのでよかったです。
避難所で一晩を過ごし、朝になって自宅に戻ると水はすっかり引いていました。
川が氾濫し土砂が流れ出たあと。
斜面が少し崩れていました。
玄関に上がる踏み台にしている丸太を見ると、水量がはっきりとわかります。
これは物置にしているティピに置いてある衣装ケース。
こちらも水量がわかります。
水が流れたことによりあちこち崩れたり、掘れていたり、穴があいていたり、水浸しになっている荷物などもありますが、すぐに生活が再開できる程度の被害で、大事には至らずよかったです。
休日の晴れた日に、濡れたものを片っ端から干しました。
我が家が谷間に住むことを気にかけて、近くの部落の親しいじいさんが、この地区でかなりの量の水が出たことが30年のうちで2回あるという話をいままで何度かしてくれていました。
今回はそれと同等レベルの水の量だったそうです。
過去にも敷地内の川が氾濫した形跡が実はあちこちにあって、ちょっと恐れてはいました。
まさか30年で2回の大雨が、この土地に住みはじめて3年目で来るとはまったくの予想外でした。
しかし、逆にこの程度だということもわかりました。
川が氾濫しても我が家の小屋は大丈夫なようです。
小屋が破壊されることがあるとすれば、土砂崩れや鉄砲水、ため池の崩壊、倒木といったところでしょうか。
この土地に小屋を建てて住むにあたって、当初から一番の懸念材料だった川の増水、氾濫を今回経験し、この目で見ることができたのはよかったです。
川が氾濫しやすいところは今回だいたい確認できたので、将来の水害を最小限に食い止めるために少しずつ整備していきたいです。
コメント
大事に至らず本当に良かったです。
いつも楽しく拝見しております。
この程度で本当によかったです。
ブログ読んでいただきありがとうございます。
久しぶりにブログ拝見させて頂きました。
この前の大雨で大変な事になっていた様ですね。
無事で何よりです。
コメントありがとうございます。
本当に無事でよかったです。
はじめまして長野県に住むヒーと申します。
水害お見舞い申し上げます。
自分も永住にと思ってセルフで山林開拓をして2x4の小住宅の計画中です
40年から放ってあると雑木やらふじつるやらで大仕事になってしまいました。
(年齢ははるかうえですが)老体に鞭打って頑張ろうといつもこのページを見て励まされていますお近くならボランティアで伺いたいくらいです頑張ってくださいね。^^ではまた
コメントありがとうございます。
長野も良いところですね。
私は関東出身なので山梨や長野あたりで山林を探していたこともありますが、低価格ではなかなか思うような土地に出会えませんでした。
わが家もいまだにふじづるがジャングルのようにはびこっています。
ふじの花が咲く季節はとてもきれいで、切るのが惜しくなりますが、繁殖力がすごいので私も結構切りました。
ブログがお役に立ててうれしいです。
ありがとうございます。
お忙しいところすみません。
一つお聞きします
床下が通り抜けていますが冬の床板に結露とか冷たく感じたりとかは今までどうでしたでしょうか?:::いまだ考え中でして^^信州の寒さならどの位の断熱材を使うか外断熱で二重にしようか迷っています。よろしくお願い致します。
結露はおそらくないと思います。
我が家は断熱材の上に12mmの合板、さらにその上に畳をしいているので、真冬でも冷たく感じたことはありません。
ありがとうございました。
とにかく厚めにやりたいとおもいます。
後、屋根材のオンデュリンの経過はいかがでしょうか?メンテナンスはやられてますでしょうか?様子?などもお聞かせください。度々すみませんお世話になります。
この程度で済むと自然災害の被害を過小評価されませんように。
考えが甘すぎます。
文章を見るとじいさんが来た時点で避難を開始するべきだと思います。
あなたの過小判断で家族を危険な目に合わせてはいけません。
もし、何か有った時にああしておけば良かったと後悔しても遅いです。
ご忠告どうもありがとうございます。