ナショナルジオグラフィック 「森林を知る」を読んで考えた、森と人との共生

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ナショナルジオグラフィック日本版、「シリーズ 森林を知る」。

住友林業とのタイアップ企画で、そのタイトルにひかれて読みはじめてみたところ、私の興味にがっちり合った、なかなか興味深い内容でした。

環境問題や林業、人と森の共生などに関心のある人におすすめです。

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森林を知る|ナショナルジオグラフィック日本版×住友林業

第1回 地球のリズムに耳を澄ませよ
第2回 神々と人が住み分ける日本の森
第3回 百年の時を駆ける森づくりを見た(前編)
第4回 百年の時を駆ける森づくりを見た(後編)
第5回 森と人との新たな共生に向けて

森林破壊によって成り立っている現代社会

熱帯雨林の破壊は想像以上だった。赤道直下にあるアフリカの最高峰キリマンジャロに行った時のことだ。頂上近くから山麓地帯を見ると、本来なら熱帯雨林があるべきところがパーッと一面に明るく見えた。僕は山火事に違いないと思って、ガイドに「あれは山火事か?」と聞いたら、「違う」と言う。「あれはアメリカの資本で作られたバラ農園だ。バラはまずロンドンに行く。そこで切り花に加工されてフランスやドイツなどに行く」と話してくれた。それから車で行けども、行けども、熱帯雨林は伐採されて影も形もなく、ただ農園が限りなく広がっていた。

第1回 地球のリズムに耳を澄ませよ

世界の森を30年にわたり撮影してきた写真家の水越武さんが遭遇した、熱帯雨林を伐採してつくられたアメリカ資本のバラ農園。

これに象徴されるように、資本主義社会は、お金になれば何でもしてしまいかねない世界と言っても決して言い過ぎではありません。

しかし、企業がそうした貴重な自然を破壊する背景には、消費者である私たちのあり方も関係していることは否めません。

もちろん、企業の運営方針に問題があるのは一般的な良識のある目から見れば明らかですが、そうした企業を攻め立てるだけでなく、まず私たちの生活がどれだけの森林破壊によって成り立っているのか一人ひとりが関心を持ち、知る必要があると私は思います。

持続可能な森林の利用と保全の両立

現代の大量消費社会は、一刻も早く改善できればそれに超したことはありませんが、いずれにしろ人間が生きて生活する以上は、森林資源は確実に必要になってきます。

森林の利用と保全の両立を考えたとき、ふたたび荒廃させることのないようにするためには、持続可能である必要があります。

そのバランスをどううまく保つのかという課題に、田中教授の森林ゾーニングという手法が解決策を示してくれそうな気がしました。

現在の日本の森を見ると、経済の市場原理の中で管理できる森林と、管理できない森林の2つに大きく分かれます。前者は収益を生み出す経済林として、後者は水源涵養(かんよう)など環境を保全するための環境林として運営していくべきです。環境林はさらに2つに分かれて、人間が手をかけなくても自立できる森と、手をかけて自立できるところまで誘導しなければならない森があり、後者を私は修復林と呼んでいます。森の現状に合わせ、経済林、環境林、修復林の3つにゾーニングし、それぞれ適切な対応をしていくことが必要です。

第3回 百年の時を駆ける森づくりを見た(前編)

このゾーニングという手法。実は今に始まったことではなく、日本では昔から行われていたのです。

森と人との共生の見本 日本の里山

日本人は古来、人間が及びもつかない超自然的なもの、神様という生命を森に住まわせ、護ってきた。日本人はそういう森づくりをしてきたのである。森の深いところは神の森として残し、畏敬の念を持ってめったに足を踏み入れず、みだりに木を伐ることもない。そして人里に近いところは開墾して雑木を植え、生活のための森として活用してきた。今でいうゾーニングの考え方を日本人は古くから持ち、実践してきたのだ。やがてこの日本特有の森づくりは「里山」という文化を生むことになる。

第2回 神々と人が住み分ける日本の森

写真家の今森さんがこう語るように、かつての日本は里、里山、奥山という具合に、人間界と自然界の住み分けがしっかりとされていたといいます。

里山は、田中教授のゾーニングに当てはまると、経済林になるのでしょうか。

人の生活に必要な資源は伐採と植林、あるいは更新を繰り返す人工林でまかない、原生林や自然林、熱帯雨林などのような貴重な自然は保護区に指定するなど、ゾーニング、住み分けをある程度することで、森と人とが共生できるバランスの良い社会が築けるはずだと、私は素人ながらに考えます。

住友林業100年の森に見る持続可能な森林経営

この特集記事は、住友林業とのタイアップなので、見方によっては住友林業の宣伝に見えないこともないですが、100年をかけて森を再生させ、持続可能な林業を実践している住友林業のさまざまな取り組みに、私は感動しました。

その詳細は、第4回と第5回で読むことができます。

衰退する日本の林業を、住友林業のノウハウでぜひ再生させてもらいたいです。

最後に

さて、これまで私は、木を伐ることは自然破壊で、それがたとえ一本でも心のどこかには嫌悪感があって、自分が切ったときには少なからず罪悪感がありましたが、里山やゾーニングについて知り、人と森とが共生できる持続可能な社会を考えたとき、人が生きていく上で必要な木は伐ってもかまわない、と最近では思えるようになってきました。

ただ、いくらそこが里山や経済林のように、資源供給の場として計画されたゾーンだとしても、それは自然からの恵みであることに変わりはなく、その恵みに対しての感謝の気持ちを忘れてはならないと思います。

いろいろ書いてきましたが、最後に一言。

八百万の神々の住む森、自然に対しての畏敬の念。

いつしか消えてしまった、こうした日本古来の自然観をまた一人ひとりの心に取り戻すことが出来れば、森と人との共生はそれほど難しいことではないような気が私はします。