最近(というか数ヶ月前ですが)、ガイアシンフォニーの公式サイトをのぞいて見たところ、最新作となる「第八番」の告知がされていました。
その登場人物のひとりに見たことのある顔がありました。
「森は海の恋人」で知られる畠山重篤さんです。
高度経済成長時代、気仙沼の海の環境が悪化し、牡蠣の養殖業を営んでいた畠山さんはその原因が山にあることに気がつき、漁師仲間とともに植林運動をはじめました。
それが「森は海の恋人運動」です。
この活動は小学校の教科書に取り上げられるなど次第に全国に広がり、現在では「NPO法人森は海の恋人」として活動の場を広げています。
昨年(2013年)の10月、大阪で開催された公益財団法人りそなアジア・オセアニア財団主催の、「森が豊かな海を育む」と題された企業向けセミナーに、私は仕事の関係で出席する機会に恵まれました。
このセミナーで特別講演をされていたのが畠山さんです。
講演では森と川と海の関連性を熱く語っていらっしゃいました。
私も専門的なことはよくわからないので、その時のメモを参考に要点だけを書いてみます。
落ち葉をバクテリアが分解して最後に残る成分が、「フミン酸」と「フルボ酸」。
「フルボ酸」はキレート作用で土中に解けている鉄分とくっつき、「フルボ酸鉄」という物質ができます。
鉄分はそのままだと川を流れるあいだに酸化、沈殿してしまいますが、「フルボ酸」と結合した鉄分はとても安定していて、そのままの形で海まで届くのだそうです。
この「フルボ酸鉄」を植物プランクトンや海藻が吸収することで、海が豊かになるわけです
「フルボ酸鉄」。
この言葉を検索してみると、森と海の関係には欠かせないキーワードだということがわかります。
ここで重要なのが、この一連の流れのはじまり、つまり「フルボ酸」の給源。
そう。落ち葉です。
畠山さんはこの「落ち葉」に着目し、森は海の恋人運動では植栽樹種は落葉広葉樹が選択されています。
余談ですが、私が岡山に購入した山林も落葉広葉樹の森。
かつての薪炭林、雑木林です。
敷地内には川が流れているので、この山が「フルボ酸」をしっかり供給できるように手助けできたらと思います。
セミナーでは、基調報告、パネルディスカッションのパネリストのひとりとして、アースデイ東京の実行委員長としても知られる、環境保護活動家のC.W.ニコルさんも出席されていました。
私はC.W.ニコルさんの著書も何冊か持っていて、この日のお話も興味深かったですが、それはまた別の機会に。
畠山さんの講演でもうひとつ印象に残っている話があります。
「森は海の恋人」の活動が海外メディアに紹介されるたびに、「恋人」の訳が直訳で、「lovers」などが使われていたりしてどうもしっくりこないと感じていたそうです。
あるとき、美智子皇后さまと面会する機会があったときにそのことを話すと、「long for」はいかがでしょうか、と提案していただいたそうです。
それ以来、「森は海の恋人」の英訳は、「The forest is longging for the sea, the sea is longging for the forest」となりました。
「long for」は聖書で神に対してよく使われる言葉で、「慕う、恋しい」といった意味で、両者はそれほど密接な関係にあるというニュアンスがあるそうです。
なんとも素敵なエピソードです。
さて、最後に畠山さんの言葉を引用させていただきます。
森・里・海の関わりを限りなく自然に近づけるのは、そこに生きる人間の責任です。いかに豊かな自然があろうとも、そこに生活する人間の心持次第では、まったく異なった様相を呈するものに変化してしまいます。
海のことを考える時には森まで視野に入れ、また森のことを考える時には海まで視野に入れる―こうした自然の繋がりを意識できる人が増えれば、地域は豊かになることでしょう。
ガイアシンフォニー第八番は今年、2014年10月完成予定です。
詳細は公式ホームページで。
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コメント
部分だけじゃなく、全体を見る。
この重要さ、いろんなことに通ずる気がする。