自宅の小屋の目のまえを流れる小川に、手作りで橋をかけました。
我が家への進入路は、公道から田んぼのあいだの道を通って山の中に入り、山の中を流れる川沿いを歩いて、最後にその川を渡って小屋にたどり着きます。
川を渡るには2つのルートがあって、一つは岩を踏み台にして直接川を渡るルート。
距離も近く、このルートを使うのが日常的です。(階段は手づくり)
川沿いをもう少し先まで歩いていくと丸太の橋があり、これがもう一つのルートです。
しっかり雨が降って川が増水しているときは川を直接渡るのは少々危険なので、その時はこの丸太の橋が唯一の進入路になります。
この丸太の橋は、もともと一本の太い倒木が川にかかっていたところに、ひとりで運べる細めの丸太を何本か集めてきて橋にしました。
はじめのころは丸太の数は2本くらいでしばらく使っていましたが、妻にとってはそれは危険すぎるということで、その後丸太の数を増やし、ワイヤーで丸太どうしを連結し、それなりに安定した橋になりました。
しかし、それでもこの橋はいまだに妻や近くの集落に住むじいさんらには不評で、もうちょっと何とかならないかと言われていました。
今回新しく橋を作ることになったのは、近くの集落に住むひとりのじいさんがこの橋は危ないと見るに見かねて、「これを使って橋をつくれ」となかば強制的に橋をつくるための資材を提供してくれたことがきっかけです。
さて、橋をしっかり安定してかけるためには川岸の整地が必要で、今回まずやらなければならなかったことは川岸に橋の台座となる石垣を積むことでした。
私はまえに標高3000m付近の富士山の山小屋で働いていた時に、石垣を組む手伝いをほんの少しだけしたことがあります。
その時に教えてもらって唯一おぼえていることは、上に積んだ石が少しもカタカタしてはいけないということ。
今回はその教えを忠実にまもりました。
その他に気を付けたことは内側に重心がくるようにしたことと、石が抜けないように積んだことくらい。
あとはなんとなくこんな風に積めばいいんじゃないか、という自分の感覚を頼りに積み上げていきました。
写真では石の大きさがわかりにくいですが、一番下とその上の大きな石を積むのがひとりでは大変でした。
やってみれば何とか運べるものです。
素人が組んだ石垣で見た目は乱雑に見えますが、それなりにガッチリと安定して組めたのではないかと思います。
ここはかつては棚田があったところで、川沿いや小屋の周辺には先人が築き上げた苔むした古い石垣が何メートルにもわたって残っています。
実際に自分で石垣を組んで思うのは、こんな大きな石をどうやって動かしてどこから運んできてどうやって積んだのか、ということです。
もちろん人手はたくさんあったのだと思いますが、昔の人のすごさにただ感心するばかりです。
対面する岸は石垣の内側の土が流れていて大きな空洞になっていたので、石を集めてきてはひたすら上から放り込み、その穴を埋めました。
これで両方の岸の整地は大方完了ですが、ここでじいさんの助言があり、さらに石垣を崩れにくくするためにモルタルを練って上部を固めました。
さらにブロックを置いたりして大体のレベルを合わせ、ようやく橋をかける準備が整いました。
ありがたいことに、モルタルに使ったセメントと砂、中古のブロックもすべてじいさんが提供してくれました。
さて、いよいよ橋をかけていきます。
まずは5本の鉄のアングルを渡します。
このアングルは街中でよく見かける網のフェンスに使われている枠です。
上に乗るとしなるし、一本の強度はあまり強いとは言えませんが、5本並べることで橋の土台というか補強としての役割です。
次に使うのは、今回の橋の骨格となる資材。
幅広のパレットです。
これにたっぷりペンキを塗って、アングルの上に設置します。
アングルの5本という本数は、このパレットの溝の数に合わせているわけです。
アングルとパレットは番線でしっかり固定。
このパレットを置くだけで一気に橋らしくなりました。
アングルの上に砂利や土をかぶせます。
こうすることで、ただ置いているだけのアングルがずれないように固定され、パレットの段差もなくなりました。
見てのとおり、この橋はバリアフリーです。
ただ、ここまで来る山道がぜんぜんバリアフリーではありませんが(笑)
これで完成でもよいのですが、パレットの溝を埋める目的と、パレットを少しでも長持ちさせるために、上にコンパネを一枚敷きました。
コンパネは買おうと思っていたのですが、これも端材があるから使ってくれ、とじいさんがくれました。
コンパネの端材をパレットの大きさに合うように適当なサイズにカット。
さらにパレット同様にペンキをべた塗り。
ちなみに、ここで使っているペンキも、「もうわしは使わんからもらってくれ」と一斗缶に半分くらい入ったものをじいさんからもらいました。
コンパネとパレットのあいだに雨水が侵入しないように、コンパネの継ぎ目にはコーキングをしておきました。
最後にステンレスの釘を打ち付けてコンパネを固定。
これで完成です。
すべての作業は私ひとりでやりましたが、橋の作り方は資材を提供してくれたじいさんのアイデアです。
おかげさまで安定感抜群の丈夫な橋ができました。
じいさんには、感謝です。
一歳の娘もよちよち歩くようになってきているので、この橋を渡る日もそう遠くはなさそうです。
追記:
その後、子どもも安全に渡れるように柵を取り付けました。
コメント
すごいです。リスペクトです!
石積みって、積んでるそばからぼろぼろ落ちまくって、すぐに断念しちゃいます。
私もちゃんと積めるか自信はありませんでしたが、やってみたらなんとかできました。